◆一つは、高市早苗首相は、昨年11月7日の衆議院予算委員会での野党の質問に対して、中国による台湾への侵攻が「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケース」であると答弁したことで日中関係が急速に悪化してしまった問題です。
◆もう一つは、「国家安全保障に関する重要政策及び核軍縮・不拡散問題担当」の首相補佐官である尾上定正氏が12月18日、「日本は核兵器を保有すべきだ」との考えを記者らに述べた問題です。
◆三つ目は、米国トランプ政権が1月3日、主権国家であるベネズエラを軍事攻撃し、マドゥロ大統領を拘束してニューヨークに移送し、米国内の法律によって裁判にかけたことです。
◆日中関係の大原則を無視した高市首相答弁、長く堅持してきた非核3原則を崩す首相補佐官発言、国際法無視のトランプ政権の暴挙ーこれらはいずれも戦後日本と戦後世界の根幹をゆるがす大問題です。
◆社民党はこれらについて以下のとおり談話を発表しましたので、少し長くなりますがお知らせします。談話はいずれも社民党全国連合服部良一幹事長が発しました。
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【談話】高市首相の「存立危機事態」発言と日中関係について(2025年12月23日)
高市早苗首相は、11月7日の衆議院予算委員会において、岡田克也委員の質問に対して、中国による台湾への侵攻が「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケース」であると答弁した。
政府はこれまで、「いかなる場合が存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即し、政府が持ち得るすべての情報を総合的に判断する」などと答弁してきた。具体的に「台湾有事」を指し示して「存立危機事態」に言及する答弁は、従来の政府見解を踏み外すものと言わざるを得ない。また、「台湾有事」においては戦争も辞さないという表明に他ならず、極めて軽率かつ不用意な発言であると断じざるを得ない。
安保法制は「存立危機事態」について、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」によって「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定めている。だが、国交正常化を定めた1972年の日中共同声明で日本政府は、「『一つの中国』を理解し、尊重する」と明記して、台湾を国家としては認めていない。安保法制をいかように解釈しても、日本が「台湾有事」に参戦できるという解釈は導き得ない。
高市首相の「存立危機事態」発言は、日中平和友好条約や日中共同声明における「一つの中国」の原則を反故にし、中国の内政への介入を宣言したに等しい。当然ながら、「存立危機事態」発言に中国は強く反発し、中国政府は国民に対し、日本への渡航自粛などを呼びかけた。専門家による分析によれば、渡航の自粛によって訪日中国人が大幅に減少した場合、日本の国内総生産(GDP)は0.36%押し下げられるとともに、経済損失は2兆2千億円に達すると試算されるという。中国から日本へのレアアースの輸出の規制などにつながれば、日本経済への影響はさらに重大なものとなる。
政府が開示した内閣官房作成の応答要領では、「台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控える」などと記載されていたと報じられており、首相個人の判断で持論を展開したことを政府自らが認めたも同然の状況となっている。高市首相は、「従来の政府の立場を超えて答弁したように受け止められたことを反省点として捉える」と12月16日の参議院予算委員会で答弁したが、どう考えても、従来の政府の立場を超えたものと受け止めるしかない。
また、高市首相の「存立危機事態」発言がなされた直後から、首相答弁を引き出した質問者の側の責任を追及するかのような言説も一部に見受けられたが、軽率で不用意な答弁を行った側にすべての責任がある。質問者側に責任を転嫁するかのような議論は、大いに問題である。
報道によれば、中国からの来訪客の減少によって、宿泊や小売り、航空業界では売り上げ減などの影響が既に出ている。日本の安全保障のみならず、日本経済にも深刻な影響を与えかねない高市首相の「存立危機事態」発言は、即時撤回すべきである。そもそも、「存立危機事態」などを集団的自衛権の発動要件と定めている安保法制それ自体が憲法違反の法令であり、廃止しなければならない。
社民党は、高市首相に「存立危機事態」発言の撤回を強く求めていくと同時に、憲法に違反することが明白な集団的自衛権と安保法制の廃止に向け、引き続き取り組んでいく。また、軍事費(防衛関係費)の倍増といった軍拡ではなく、日本国憲法の平和主義の理念に基づく平和外交の考えに基づき、アジアの平和と日中関係の構築に努めていく決意である。
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【談話】尾上首相補佐官による核保有発言について(2025年12月26日)
「国家安全保障に関する重要政策及び核軍縮・不拡散問題担当」の首相補佐官である尾上定正氏が12月18日、「日本は核兵器を保有すべきだ」との考えを記者らに述べた。発言は、オフレコを前提とし、個人的な見解と断ってはいるものの、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」を国是とする、これまでの政府の方針に完全に反するものである。
木原官房長官は翌19日の記者会見で、「核兵器のない世界に向けた国際社会の取り組みを主導するのが、唯一の戦争被爆国であるわが国の使命」と述べている。であるならば、尾上氏の発言はなおさら政府の立場を著しく逸脱している。こうした考え方を持つ者が、首相の行う企画・立案を補佐する立場にあるというのは由々しき事態である。
尾上氏は直ちに発言を取り消して辞任すべきであるし、任命権者である高市首相自身が尾上氏を更迭するべきである。そうでないならば、高市首相も尾上氏の考えを事実上、擁護しているものと受け止めざるを得ない。尾上氏は核軍縮・不拡散の担当ともなっているが、核軍縮・不拡散を担当する補佐官としては不適格である。高市首相の任命責任は重大だ。また、尾上氏は航空自衛隊出身で、北部航空方面隊司令官や補給本部長などを務めた元空将でもある。仮に、幹部自衛官の間に核保有論が広がっているのなら大問題である。
そもそも、高市首相自身に非核三原則を堅持しようという積極的な姿勢が見られない。11月11日の衆議院予算委員会で高市首相は、非核三原則を堅持するかどうかについて問われた際に、「私から申し上げる段階ではない」と答弁し、明言を避けている。そして、11月14日には、国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に伴い、非核三原則における「持ち込ませず」の見直しを検討していることなどが、政府・与党の関係者によって明らかになった。
11月26日の国会での党首討論で、高市首相は非核三原則につき「政策上の方針としては堅持している」、「明示的に見直しを指示したという事実はない」と答弁するなど、軌道修正を図った。しかしながら、尾上氏の今回の発言は、たとえオフレコの個人的見解であったにせよ、本当に高市政権が非核三原則を堅持しようとしているのか、疑念を抱かざるを得ないものである。
今回の核保有発言に対しては、被爆者や被爆者団体はもとより、自民党内からも批判が出ている。米国国務省の報道担当者からも、高市政権内の核保有論をけん制するかのような発言があったほか、広島県議会も非核三原則の堅持を政府に求める意見書を全会一致で可決した。非核三原則の堅持を求め、今回の核保有発言を許さない世論は、政治的な立場の違いを超えて拡大・共有されようとしている。
被爆者の思いを踏みにじり、日本国憲法の平和主義の理念とも全く相容れない核兵器保有など言語道断である。日本政府は、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加すらできていない状況である。社民党は核兵器の廃絶を目指し、高市政権に対し非核三原則の堅持を強く求めるとともに、日本の核兵器禁止条約への参加に向け、取り組みをさらに強化していく決意である。
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【談話】アメリカによるベネズエラへの攻撃に関して(2026年1月4日)
米国トランプ政権は3日、ベネズエラに対して軍事攻撃を行い、マドゥロ大統領を拘束した。マドゥロ氏はニューヨークに移送され、米国内の裁判所で裁判にかけられる予定であるとも報じられている。
国連憲章は、「武力による威嚇または武力の行使」を原則として禁止しているし、今回の軍事攻撃は、国連安全保障理事会の決議を経ているわけでもない。国連の常任理事国である米国がこのような強硬手段に打って出ることは、国連憲章をはじめとする国際法を根底から無視するものであり、言語道断だ。
自衛権の発動は例外的に認められている。だが、米国が直接の攻撃を受けたなど、ベネズエラによる軍事的な脅威を受けていた状況になく、自衛権の発動に当たるとは全く言えない。
国連のグテーレス事務総長が「危険な前例になる」、「地球全体に懸念すべき影響を及ぼしかねない」と批判したほか、フランス外相が「国際法の根底にある武力不行使の原則に違反」、「政治問題の永続的な解決は外部から強制されるべきではない」と発信するなど、批判や懸念の声が続々と上がっている。トランプ政権は、こうした批判や懸念を真摯に受け止めるべきである。
日本の外務省は、省内に中南米局長をトップとする連絡室を設置した。日本政府は、ベネズエラ国内の邦人の保護に全力で当たるべきである。そして高市政権は、「法の支配」を軽視し、武力攻撃による「力の支配」に突き進む米国トランプ政権を強く非難するべきであり、今回の軍事攻撃をわずかでも支持することはあってはならない。
日本国憲法は第9条において、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定める。社民党は、憲法の平和主義の理念に則り、平和的な手段による国際紛争の解決に力を尽くす決意であるとともに、日本政府に対してもそのことを強く求めていく次第である。